ノーベル賞受賞者とライフハック本の著者が共に語っていること

2016年10月9日
Jakob_F / Pixabay

急に寒くなった上に天気もあまり良くないので本を読んでいます。

小説の世界を楽しめればいいのでしょうが、読書ではフィクションの世界にのめり込むことができません。それなのに、映画やテレビドラマを観る場合は、それほどこだわりません。

そんな私はライフハックや仕事術の本をよく読みます。

私としては自己啓発のための読書とは考えていないのですが、一般的にはそうなのかもしれません。

その主たる目的は、ルーチンワークのために無駄に費やしている時間を少なくすることです。もちろん、「無駄」かどうかを見極めるのは難しいことです。必要な「無駄」があることも経験的に感じているいるからです。

今日は、こんな本を再読していました。

Evernoteの活用について再考するのが目的でした。ところが、後書きまで読み終えた段階に、まったく違うことに気づきました。

著者である堀正岳氏の「おわりに」の一節が、後で引用紹介するノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大隅良典氏の講演や元岡崎国立共同研究機構長だった毛利秀雄氏の言葉と重なったのです。

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著者である堀正岳氏の「おわりに」の一節

現在、日本の理系研究者をとりまく環境はけっして容易ではありません。予算の削減や、人件費の削減、そして少子化に伴う研究者人口の減少。それに反比例するように増大する研究者一人あたりの事務作業量。こうした状況は、知性を発揮する研究の現場をより困難なものにしています。取り組むベきテーマは年々高度化し、国際的な競争力が強く求められているのにです。

こうした発言はこれまで何回も繰り返されてきています。しかし、残念ながら、その状況が改善されているとは言えないようです。

朝日新聞デジタル記事

朝日新聞の記事では、ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大隅良典・東京工業大栄誉教授が日本人のノーベル賞受賞者が毎年出ていることで浮かれている状態ではない」と、短期間に研究成果を求める日本の現状に警鐘を鳴らしたことが紹介されています。

http://www.asahi.com/articles/ASJB761JLJB7ULBJ019.html

 

ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)は7日、同大で講演し、「日本人のノーベル賞受賞者が毎年出ていることで浮かれている状態ではない」と、短期間に研究成果を求める日本の現状に警鐘を鳴らした。

大隅さんはこれまでの研究を振り返りながら、「日本の大学の基礎体力が低下しているのは深刻な問題」と指摘。研究費の多くが競争的資金になると長期的な研究が困難になるとし、今後、新しい研究分野で日本人がノーベル賞を受賞するのは「非常に難しくなっているのではないかと危惧している」と述べた。

基礎生物学研究所HP記事

また、元岡崎国立共同研究機構長・毛利秀雄名誉教授は次の寄稿の中で、基礎研究をとりまく状況について「なげかわしい」と表現しています。

 大隅君はインタビューで、基礎研究の重要性を訴え、現状を憂い、そして一億に近い賞金をあげて若手を育てるために役立てたいとコメントしています。それに対してマスコミや首相は応用面のことにしか触れず、文科相は競争的資金の増額というような見当はずれの弁、科学技術担当相に至っては社会に役立つかどうかわからないものにまで金を出す余裕はないという始末です。なげかわしい。これでは科学・技術立国など成り立つはずがありません。それにもめげず、より多くの若い人たちが大隅君の受賞に刺激されて、すぐに役立つわけではない基礎研究に、そしてどちらかというとこれまで恵まれてこなかった生物学(生命科学)の研究に進んでくれるようになることを大いに期待したいと思います。

まとめ

秋になり、多くの研究者が科研費の申請事務に取り組む時期になりました。資金獲得は研究に関する業務の一つですが、余計な仕事でもあるととらえることもできます。

さて、厳密に考えれば、この記事で紹介した三名の主張をそれぞれ別物としてとらえることもできるかもしれません。でも、私にはそれれの主張が重なり合っているように思えたのでした。

また、これに類似する話が語られるのは、なにも基礎科学やいわゆる理系研究という枠組の中だけではないのかもしれません・・・