英語教科書の描く心象地理

今年6月に福井大学を会場に開催された第41回中部地区英語教育学会 福井大会のプログラム発表要旨の中に気になるものがあったので、個人的な記録として引用して掲載しておきます。井の中の蛙にならないようにしなくては。できるだけ・・・[E:coldsweats01]
なお、プログラムと発表要旨のサイトURLはこちらです。PDF版も用意されています。ありがたいですね。

<タイトル>中学校英語教科書の描く心象地理
<発表者>野村幸代さん(東京大学大学院生)
<要旨>
心象地理(Imaginative Geography)とは人の心に描かれる地理感覚である。サイードが『オリエンタリズム(1979)』で提唱したこの概念は、読者がテキストの表象によって実際の地理とは異なるイメージを持つことを意味している。批評理論ではテキストを構成する際に潜在的に働く作用をイデオロギーと呼ぶ。つまり特定のイデオロギーによりテキストが表象され、それによって読者の心象地理が形成されるのである。先行研究は教科書にイデオロギーが潜在することを指摘し、そのイデオロギーが「ゆるやかなマインドコントロール」になる危険性を示唆している。本研究は中学校の全教科書の題材を用いてこの心象地理を描き出すことにより、中学校英語教育で表象される「世界地図」を明示した。この心象地理には、中東、旧ソビエト連邦地域、イギリスを除くヨーロッパが描かれていない。また、選択体系機能文法を用いたテキスト分析を行ったが、これにより東南アジア、南米、南アフリカ大陸に存在する国に関する英語教科書の表象にも一定のパターンが存在していることも明らかになった。それは、日本により経済的、技術的に援助を受けている貧困国として、またはその国にある世界遺産のみに焦点を当てて記述されている。その後、サイードが用いた対位法的解釈を用いて心象地理とテキストの描写方法を分析した。ポストコロニアル批評の基づいたこの分析は、心象地理を描き出すイデオロギーを理論的に説明する。教科書の記述を構成する際に働くイデオロギーは政治的、経済的、地政学的な力により左右されることを教科書の複数の例を通して明らかにする。これらを通して教科書だけでは学習者に偏った世界観が植え付けられることを指摘し、教師の洗練された国際感覚や教養の必要性を強調する。

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