80年代の全米地理教育復興運動

 現在、小学校低学年・高等学校に「社会科」という教科はありません。こうした「社会科」解体や学習指導要領の改訂の動きの中で、「地理」教育のあり方が問われているわけです。「地理って何を教えるの?」という疑問は、実は難問なのかもしれません。
 戦後日本の社会科教育は、アメリカ合衆国のSocial Studiesにならって構成されました。そのアメリカ合衆国では、1980年代に「地理教育復興運動」とか「地理教育ルネッサンス」と称される動きが巻き起こりました。この背景には、子ども達の学力水準の低下傾向を訴えた「危機に立つ国家-教育改革報告書」(1983)や、国民の巨細的知識の欠如がアメリカ合衆国の存亡に係わることを述べた「外国語と世界学習推進委員会(大統領委員会)報告」(1979)がありました。
 当時。アメリカ国民の地理的教養がどのくらい危機的状況だったのかを、中山修一著「地理にめざめたアメリカ」(古今書院)から紹介しておくことにします。
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*全米地理学協会(NGS)会長ギルバート・M・グロスノバーが1988年7月7日にワシントンの合衆国記者クラブで行った講演記録から*
 この講演は、当時、地理教育復興運動を主催していた全米地理学協会が、ギャロップ社に委託して実施した、世界9カ国の18歳以上の成人に対する地理教養国際比較調査結果をもとにして行われた。
<国民の地理教養の危機的状況>
1 国民の7人に1人は世界地図上でアメリカ合衆国を指摘できなかった
2 10人に3人は、東西南北の方位さえわからかった
3 2人に1人は南アフリカを地図上に示せなかった
4 回答者の45%は、アパルトヘイトが南アフリカ政府の政策であることを知らなかった。
5 4人に3人がペルシャ湾を地図上で示せなかった
6 2人に1人は農業地帯として有名なイリノイ州を地図上で示せなかった
7 10人に6人は、大統領候補デュカキス(注:1988年の大統領選挙に民主党候補としてブッシュと競った人物)の出身地マサチューセッツ州がどこにあるか知らなかった。
8 4人に1人は、太平洋がどこにあるのかさえ回答できなかった
9 調査対象の最も若い層である18~24歳層は、40年前の同世代の調査結果よりも劣っていた
10 総合点で9カ国の順位を見ると、
   1位 スウェーデン
   2位 西ドイツ
   3位 日本・フランス・カナダ
   4位 イギリス・アメリカ合衆国
   8位 イタリア
   9位 メキシコ
   となり、アメリカ合衆国は最下位から3カ国に入っている
11 最も不安なことは、なんと18~24歳の若年層をとってみると、アメリカ合衆国は9カ国の中で最下位ということである

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日本は3位ということですね。でも、今はどうなのかは不安です。右上の好きなサイトhttp://www.chakuriki.net/を訪ねてみてください。
(参考文献)
志村 喬(1993):アメリカ合衆国における地理教育の動向について-HSGPから5大テーマへ-.社会科研究(新潟県高教研社会科部会)第31集.pp.25-38.
中山修一(1991):地理にめざめたアメリカ-全米地理教育復興運動-.古今書院
佐藤三郎(1997):アメリカ教育改革の動向-1983年『危機に立つ国家』から21世紀へ-.教育開発研究所

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