国際的な地理学習の傾向と日本の地理学習

平成26年9月14日(日)、日本学術会議講堂を会場として、公開シンポジウム「持続可能な未来のための教育と人材育成の推進に向けて」が開催されました。

主催は、日本学術会議フューチャー・アースの推進に関する委員会持続可能な発展のための教育と人材育成の推進分科会。協賛は(公社)日本地球惑星科学連合、地理学連携機構でした。

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シンポジウムの趣旨や内容

このシンポジウムの趣旨や内容の概要は、次のサイトにあるポスターで知ることができます。

http://www.jpgu.org/images/scj_sympo/scj_sympo_20140914.pdf

このポスターをもとに、お話しされた方々のタイトルとお名前をここでも書いておきます。

○持続可能な未来を考えるための知識や技能の習得と問題解決能力の育成

日置光久(日本学術会議特任連携会員、東京大学大学院教育学研究科特任教授)

○地域と学校との連携による持続可能な人材の育成

小金澤孝昭(日本学術会議特任連携会員、宮城教育大学教育学部教授)

○フューチャー・アースに向けた国際的な教育の課題

井田仁康(日本学術会議連携会員、筑波大学人間系教授)

○サステイナビリティ学が目指したネットワーク型学術拠点の構築

福士謙介(日本学術会議特任連携会員、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構教授)

○高等教育機関における専門教育としてのサステイナビリティ学教育の試み―理念と手法

味埜 俊(東京大学新領域創成科学研究科教授・サステイナビリ ティ学グローバルリーダー養成大学院プログラムコーディネータ)

○臨床環境学―グローバル複合型人材育成のための新しい学理と手法

岡本耕平(日本学術会議連携会員、名古屋大学大学院環境学研究科教授)

○国際エネルギー・資源戦略を立案する環境リーダの人材育成について

田路和幸(日本学術会議特任連携会員、東北大学大学院環境科学研究科教授)

○地域コミュニティと共に創る教育

花木啓祐(日本学術会議会員、東京大学大学院工学系研究科教授)

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フューチャー・アースに向けた国際的な教育の課題

このシンポジウムで興味を持ったのは、「フューチャー・アースに向けた国際的な教育の課題」という井田先生の発表です。タイトルだけではわかりませんが、事例として、地理学習を取り上げています。

何事にもあてはまることでしょうが、地理学習の在り方についてもさまざまな考えがあります。もちろん、そのこと自体は否定しません。

しかし、日本の地理学習の在り方が国際的な地理学習の在り方と大きく異なっていることに、私は疑問を感じています。持続可能な未来のための教育・将来に目を向けた教育 が必要であるという井田先生の考えを私は支持します。

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日本の地理学習は国際的な地理学習と何が異なるのか?

発表の中で、井田先生は次のような資料を提示して、日本の地理学習の特徴を説明しています。

http://www.scj.go.jp/ja///event/pdf2/140914d.pdf

1 地誌の学習 → 系統地理的学習 → 主題的学習

(事実の確認、知識の習得) (一般性の抽出) (探究のプロセス)
2 系統地理的学習 → 地誌の学習 → 主題的学習

(概念、一般性) (事例としての学習) (探究)

地理学習では、1、2においても、概念や理論が導出できるが、実際には、系統地理的学習も知識の習得におわっている。日本の独自性を大事にするとしても、世界的な傾向を知っておくことは必要。

資料にある1の進め方が、日本の地理教育です。帰納的学習法と言えます。これに対して、国際的な地理学習の傾向は2の進め方が主流になってきています。演繹的学習法と言えるでしょう。

もちろん、どちらにおいても概念や理論を導き出すことはできます。しかし、井田先生も指摘しているように、日本の地理学習は知識の習得でおわっているのが問題なのです。

日本の地理学習は、伝統的に学習内容に基づいて構成されてきた結果、暗記中心の学習に終始することが問題視されました。その後、「地理的な見方・考え方」が注目されたものの、それに対する批判もなくならず、知識の習得でおわる地理学習がまだ多くの学校で続けられているのです。

まとめ

私は、まず学ばせる地理的な概念や理論があり、それを育成するにふさわしい学習内容(事例地域)を選ぶべきだと考えています。しかし、日本では学習内容に基づいて構成する地理学習を続けられており、身に付ける地理的な概念や理論、そして、そのための学習プロセスが明確になっていない場合が少なくありません。授業の時間数も無限にあるわけではないことを考えると、日本の地理学習が取り組んでいる進め方のままで、未来志向の教育が果たしてできるのかと少々不安になってしまいます。